佐用町平福地区にある「たつ乃屋本店」は、明治中期に創業した歴史ある醤油蔵です。
江戸時代、姫路と鳥取を結ぶ因幡街道随一の宿場町として栄えた平福。川沿いには今も土蔵群が立ち並び、往時の面影を残しています。その町並みに溶け込むように建つ「たつ乃屋本店」は、100年以上にわたり佐用の食文化を支え続け、今も地域に欠かせない存在です。
創業者の鹿之助さんが始めた蔵は、現在5代目の船曳隆子(りゅうこ)さんが受け継いでいます。平成28年ごろに蔵を継いだ隆子さんは、先代から受け継いだ製法を守りながら、佐用の暮らしに寄り添った新しい商品づくりにも挑戦しています。

平福の町並みに佇む歴史ある醤油蔵

「たつ乃屋」という屋号は、かつて“たつの”から職人を呼んで始めたことに由来するといわれています。店横の蔵には麹室や仕込み桶が残り、さらに奥には堂々とした杉桶が並びます。蔵に立ち入ることはできませんが、店頭に立つだけで醤油の香ばしい香りが漂い、長い時間を重ねてきた歴史を感じさせてくれます。
平福は町並み保存地区としても知られ、観光客にも人気のスポット。古い町並みを散策しながら、ここでしか出会えない佐用の食文化を体感してみてはいかがでしょうか。
三年熟成の特別な味わい「三年醤油」

看板商品は、その名の通り三年かけてじっくり熟成させる「三年醤油」。
人がすっぽり入るほどの杉桶で、丸大豆と麹がゆっくりと発酵し、時をかけて旨味を引き出していきます。
搾りの工程も機械に頼らず、自然の重みを利用して「ぽとぽと」と滴らせる昔ながらの製法。薄暗い蔵に漂う香りと、使い込まれた桶の風格は圧倒的で、今もなお受け継がれる伝統の重みを実感できます。
手間と時間を惜しまないからこそ生まれる深い旨味と芳醇な香り。大量生産はできませんが、唯一無二の味わいとして全国の醤油ファンを魅了しています。近年は健康志向やスローフードの流れもあり、県外から買い求める方も増えています。
多彩に広がる醤油のラインナップ

たつ乃屋本店では「三年醤油」のほかにも、料理に合わせて選べる多彩な醤油を展開しています。
- さしみ醤油 … 濃厚で旨味が強く、刺身や寿司に最適
- 米白(こめしろ)醤油 … 淡い色合いで素材の色を活かせる。関東や宇都宮からの注文も多数
- うすくち・こいくち醤油 … 普段の家庭料理に使いやすい定番
- 生姜醤油やホルモン用のタレ … 佐用の食文化に合わせて開発された人気商品

これらの醤油は地元の家庭はもちろん、飲食店でも広く使われています。佐用町内の「ふじ」「一平」「お多福」などで味わえるほか、神戸市垂水区に昨年オープンしたホルモン焼きうどん店「みかづき」でも採用されています。さらに東京や長野、栃木など、全国の飲食店からも高い評価を受けています。
地域とともに歩む醤油蔵
たつ乃屋本店の醤油は、同店のほかにも道の駅宿場町ひらふく(佐用町)、ヤマダストアー(姫路市など)、道の駅しんぐう(たつの市)、海の駅あいおい白龍城(相生市)などで購入可能。観光の途中でも気軽に手に取れるのが魅力です。
創業から一世紀以上、変わらず大切にしてきたのは「本当に喜んでくれる人に届けたい」という思い。大量生産ではなく、手間を惜しまない誠実なものづくりを続けてきたからこそ、地域で、そして全国で愛されてきました。
まとめ
佐用町・平福の町並みに今も息づく「たつ乃屋本店」。三年熟成で仕上げる醤油は、芳醇な香りと奥深い旨味が料理を引き立てます。地元で長く親しまれ、全国の飲食店にも広がるその味は、まさに佐用を代表する逸品。
観光で平福を訪れた際には、ぜひ立ち寄って、蔵の空気とともに伝統の味を感じてみてください。お土産や贈り物にもぴったりです。
営業時間 | 8:30~17:00 |
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定休日 | 年末年始 |
住所 | 〒679-5331 兵庫県佐用郡佐用町平福683 |
電話 | 0790-83-2543 |
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