福岡から佐用へ。肥後橋亮多朗さんに聞く、移住・就農のリアルとこれからの農業

1998年生まれ・福岡県みやま市出身の農家「MINORIBATAKE」代表・肥後橋亮多朗さん。
いま佐用町で、とうもろこしを中心とした多品目栽培に取り組む若手農家として注目されています。

今回は、移住前の背景から地域おこし協力隊時代、就農の準備、佐用町で感じるやりがいと苦労、そしてこれからの農業像まで、じっくりお話を伺いました。

目次

肥後橋亮多朗さんのプロフィール

肥後橋 亮多朗(ひごばし りょうたろう)

MINORIBATAKE 代表

1998年1月2日生まれ。
福岡県みやま市出身。

佐用町でとうもろこし・ナス・ブロッコリー・にんじんなどを育てる若手農家。2021年、佐用町・地域おこし協力隊員に着任し、味わいの里三日月での活動を中心に農業全般を学ぶ。協力隊期間後に青年等認定農家を取得し、任期後に独立。「野菜の“実り”が、食べる人の人生の“実り”につながるように」をテーマに、味と栄養価にこだわった農業と、次世代につながる科学的な農法の確立を目指している。

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移住前のこと──“とりあえず行ってみようか”で福岡から佐用へ

福岡県みやま市出身の肥後橋亮多朗さん。

移住前は地元で働きつつ、「デスクワークより体を動かす仕事をしたい」と考えていました。そんな時、佐用町の農家の知り合いが、お母様を通じて声をかけてくれたのが移住のきっかけでした。

――もともと移住や農業に興味があったわけではないのですか?
「いえ、全然です(笑)。実家が専業農家だったので“農業が身近だった”くらいで、佐用に来たのは“誘われたから、一度行ってみようか”っていう感じでした。」

しかし、最初の数ヶ月は苦労も多かったと言います。

「寒暖差も大きいし、方言も違うし、どこに行くにも距離があるし……。正直、来てすぐは福岡に帰りたいと思っていました。」

それでも、地域の人とのつながりが増えるにつれ、「ここで農業をやってみたい」という気持ちが芽生えていきました。

佐用町・地域おこし協力隊員としての日々

出典:佐用町地域おこし協力隊Facebook

肥後橋さんが地域おこし協力隊として着任したのは2021年4月1日。「味わいの里三日月」の農地を中心に、果樹や野菜づくりなど、幅広い農業を経験しました。

――協力隊ではどんな活動を?
「果樹も野菜も、ほぼなんでもやっていましたね。同期と日程を合わせながら、地域の圃場で試験的に作物を育てることもありました。」

協力隊期間中には、将来の就農に必要な「青年等認定農家」の取得準備も進めていました。

「土地の確保や今後の事業を考えると、認定農家の取得は必須です。協力隊の3年間で、そこはきっちり準備しました。」

就農の決意と“MINORIBATAKE”誕生

香ばしく控えめな甘さが特徴の“赤い”とうもろこし(大和ルージュ)
安心に食べられる有機にんじん

協力隊卒業後、肥後橋さんはついに農家として独立。「MINORIBATAKE」の屋号を掲げ、農地も地域の知り合いから引き継ぎながらスタートしました。

――“MINORIBATAKE”という屋号にはどんな思いが?
「野菜の“実り”が、食べる人の人生の“実り”につながってほしい。特に子どもや子育て世代を意識しています。“毎日食べるものだからこそ、豊かさを届けたい”という思いを込めました。」

主力作物はとうもろこし。夏はナスととうもろこし、秋冬はブロッコリー・大和ルージュ・にんじんを中心に育てています。

――栽培のこだわりは?
「とにかく“味と栄養価”ですね。佐用の寒暖差は味の濃い野菜につながるので、そこを最大限に活かしたいです。」

いまの農業とやりがい

現在は三日月エリアに、15圃場ほどを管理しています。

――やりがいを感じる瞬間は?
「純粋に“いいものができた!”と思えた瞬間ですね。あとは、食べてもらった時に“全然違う”って言われると、本当に嬉しいです。」

一方、獣害は深刻な課題です。

「鹿、カラス、アライグマ……。獣害はかなりしんどいです。対策費も高いし、心が折れそうになることもあります。」

それでも農業を続けられるのは、“良いものを作りたい”という気持ちが揺るがないからだと語ります。

佐用町で農業をする意味

肥後橋さんには、佐用で農業を続ける理由が明確にあります。

――これから農業で実現したいことは?
「後継者を増やしたいです。耕作放棄地が減れば、獣害も減らせるし、農地と動物のすみ分けもできます。」

農業の“見える化”にも取り組んでいます。
土壌分析は、一般的な分析ではなく、BLOF理論の専門家に依頼するほど。

「勘や経験だけの農業じゃなくて、科学的に裏付けのある農業にしたい。そうすれば次の世代にも伝えやすいし、子どもや子育て世代にも安心して食べてもらえると思っています。」

これからの佐用町と農業に向けて

地域おこし協力隊として佐用町に飛び込み、3年間の経験と準備を経て独立した肥後橋亮多朗さん。獣害や天候など厳しい環境と向き合いながらも、「いいものを作りたい」という真っすぐな気持ちを原動力に、日々畑に立ち続けています。

現在は、三日月エリアを中心とした複数の圃場で野菜を育てながら、味わいの里三日月、旬菜蔵、プチマルシェ徳久店、めぐみの郷、ホームセンター・アグロ佐用店など所を主な販路として展開。
佐用で育ったとうもろこしやナス、ブロッコリーなどは、多くの人の食卓へ届けられています。

「耕作放棄地を減らしたい」「後継者を増やしたい」──。農業からできる町づくりを語る肥後橋さんの目は、静かでありながら力強いものでした。

佐用に根を張った若手農家として、そして“MINORIBATAKE”のつくり手として。これからも、この土地の気候と向き合いながら、豊かな“実り”を私たちに届けてくれるはずです。

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