佐用町役場の町長室。そのドアは、いつも開いています。
「町民の方なら、いつ入ってきてもらっても大丈夫ですよ」
そう穏やかに話されるのが、2025年11月13日より佐用町長を務める江見秀樹さんです。
今回のインタビューでは、ええやんサヨウの重田が、町民として素朴に感じている疑問を、そのままぶつけてみました。
人口減少にどう向き合っていくのか

重田町長のお話を聞いていると、人口減少についても、かなり現実的に向き合っておられる印象があります。



そうですね。
人口を増やす努力、減らさない努力は、当然これからもやっていきます。
その上で、もし人口が減ったとしても、町の暮らしが立ち行かなくならないように、どう備えるかを考えておくことが大事だと思っています。



そこで出てくるのが「縮充」という考え方ですね。



はい。
縮充というのは、町の規模が小さくなることを前提にしながら、暮らしの中身はむしろ充実させていこうという考え方です。
無理に背伸びをしたり、身の丈に合わないことをする必要はないと思っています。
消防団の見直しに表れる「縮充」





ちなみに、「縮充」という考え方が町に反映されている事例はありますか。



町民の皆さんが分かりやすいところで言うと、消防団の操法大会でしょうか。



操法大会は、本来、消防用機械器具の取り扱いや操作の方法についての技術を確認する場です。
ただ、いつの間にか操作技術そのものではなく、「大会に出ること」が目的になっていた部分がありました。
消防団員数も減少する中で、同じ人が何度も出場する状況もあり、負担が大きくなっていたと聞いています。そこで、希望する分団だけが参加する形に変更しました。





出初式も、屋外で立ったまま実施するのではなく、屋内で椅子に座って行う形に変更しました。
一方で、ポンプ点検や実践的な訓練など、本来必要なことはこれまで通り大切にしています。目的はあくまで、命を守る力を身につけることですから。
各消防団と協議を重ねた上で現在の形に変わりましたが、縮小しながらも中身は充実させる。これが「縮充」の一例と言えるかと思います。
子育て支援は「この際、一気にやろうと思った」



「縮充」で言うと、子育て支援についても、かなり力を入れている印象があります。



正直に言うと、最後まで残っていた負担もいくつかあったんです。
給食費や保育料ですね。国が動いたタイミングでもありましたし、この際、一気にやろうとより拡充する方向です。



具体的には、どう変わるのでしょうか。



小学校の給食費は国の制度で無償化されますが、佐用町では町独自で中学校給食費の無償化に向けても動いています。義務教育期間を通して、給食費の負担をなくしたいと考えています。
それから、保育料についても、これまで第1子の未満児だけ自己負担が残っていましたが、来年度からは第1子を含めて完全無償化に向けて動いています。
現場の声から生まれる安心して子育てできる環境





その他にも力を入れている取り組みはありますか。



おむつ支援や医療費支援、子育て支援券などでしょうか。



おむつ支援について、詳しく教えてください。



おむつを持って行って、汚れたものを持って帰るというのは、親御さんにとってかなりの負担です。保育士さんにも負担がありました。
そこで、保育園では園内で使う紙おむつを町が無償で用意して、処分まで園で行うようにしました。園に通っていない乳幼児がいる家庭には、おむつ券を配布しています。
この負担を少しでも軽くしたいという思いで始めた支援ですが、そこが少し楽になるだけでも、だいぶ違うと思っています。



医療費支援や子育て支援券についても教えてください。



医療費に関しては、18歳到達年度末まで、医療費の無償化を続けています。小さな子どもから高校生世代まで、安心して医療を受けてもらえるようにしています。
子育て支援券に関しては、小学生には年間1万5千円、中学生には3万円分の支援券を支給しています。現金ではなく、町内の加盟店で使える形にしているのは、家庭の負担を軽くすると同時に、町の中でお金が回るようにしたいからです。
子育て支援を支える「財源」の考え方



これだけ制度を整えると、「財源は大丈夫なのか」と気になる町民の方もいると思います。



そこは、きちんと考えています。
佐用町には、メガソーラー事業によって、年間で約7,000万円近い収入があります。この収入は、子育て支援をはじめとした施策の一部の財源にもなっています。



町としての収入があることで、住民への還元もしやすくなるわけですね。



そうですね。予算があれば、できることの幅も広がります。
だからこそ、メガソーラーに限らず、いろいろなことを「まちづくりの手段」として検討しています。町にとってプラスになるのであれば、これ以外にも今後実施できればと考えています。
若者を「引き止めない」という選択





移住や定住については、「出ていくなとは言えない」という言葉が印象的でした



行きたいところに行って、学びたいことを学んでほしいです。ただ、戻ってこられる道は残しておきたいと思っています。



通学定期の助成制度も、その考え方でしょうか。



はい。
これは「都会に行くな」というための制度ではありません。選択肢を残すための制度だと思っています。
大学や専門学校に通う学生を対象に、月5,000円までは全額助成して、それを超える部分は半分助成しています。(上限は月8,000円)
町長室のドアを開けている理由





ありがとうございます。最後に、町長室のドアを開けていることに理由はあるのでしょうか。



副町長時代も基本的には開けていたのですが、町民の方と話をするのに、ハードルはいらないじゃないですか。制度や計画の前に、人がいる町政でありたいと思っているので、「町民の方はいつでも入ってきてくださいね」という意味も込めて、ドアは基本的には開けるようにしています。
今回のインタビューで印象的だったのは、江見町長の自然体な姿勢でした。
制度や計画を語る場面でも、常に「それは実際の暮らしでどうか」という視点があり、話の出発点が生活の中にありました。
おむつ支援や消防団の見直しの話からも分かるように、理想論ではなく、現場の声を丁寧に拾いながら判断されているように感じます。
町長室のドアがいつも開いているというエピソードも、町民と同じ目線で向き合おうとする姿勢の表れでしょう。
佐用町は、急激に変わる町ではありません。けれど、無理をせず、続けられる形を選びながら、少しずつ整えていく。江見町長の言葉からは、そんな町政の方向性が伝わってきました。
この対話が、町政を身近に感じるきっかけになれば幸いです。






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