日本人の主食といえばお米。とある調査によれば、1日に1回以上お米を食べる人の割合は94.4%にも上るのだとか。
日本の食文化を語る上で切っても切れないお米ですが、お米を生産する農業従事者は、年々減少している上、高齢化問題に直面しており、佐用町規模の街ではこの問題がより深刻化しています。
今回取材した矢内晴之さんは、このような状況下において新しく農業法人を設立された、いわば地方農業従事者のホープ。ぜひ矢内さんの想いとこだわりを読んでみてください。
株式会社Farm plus Sky & Earth 矢内晴之さんのプロフィール
矢内 晴之(やない はるゆき)
株式会社Farm plus Sky & Earth 代表取締役社長
1988年11月21日生まれ。
兵庫県佐用町横坂出身。
佐用高校卒業後、神戸学院大学に進学。4年次に佐用町豪雨水害が発生し、実家である(有)佐用公衆衛生社でのアルバイトを通じて地元の復興支援に取り組む。卒業後は佐用町へUターンし(有)佐用公衆衛生社に入社。2024年5月に兼業農家として法人を設立。
“農業を通じて良い街をつくりたい” 農業法人設立の背景と想い
―― 農業はいつからされているのですか?
関わり始めたのは小学生の頃です。小さいころから機械が好きなのですが、機械に乗ることが楽しくて農業を手伝っていました。本格的に農業を始めたのは、大学卒業後、25歳くらいの時ですね。
―― 本業(=佐用公衆衛生社の仕事)がある中で、農業を本格化された理由はありますか?
農業は、父親(矢内哲治さん)とともに行なっているのですが、父親も私も“耕作放棄地をなくしたい”という想いを持っていたんです。
耕作放棄地が増えれば、街の見栄えも悪くなりますし、街中に動物の棲み家ができるかもしれない。そうなると安心に暮らせなくなるかもしれないので、「安心安全に暮らせる街を維持するためにはどうすべきか?そうだ、耕作放棄地を減らそう」と、二人の考えが一致して本格的に農業を始めました。
―― ちなみに今は、どれくらいの田んぼを管理されているのですか?
広さ的には合計11町、枚数としては103枚の田んぼと、丹波黒を作る畑を9反管理しています。
―― かなりの枚数ですが、全て保有されているのですか?
保有している田畑は一部で、“機械が故障したからうちの田んぼも管理して”だとか、“年をとってもうできないから管理して”だとか、いろいろな方から田んぼの管理を相談された結果、103枚の田んぼを管理するようになりました。
町内各所に点在している上、2畝(60坪)ほどの田んぼもあるなど、管理委託を受けることで苦労も増えるのですが、管理枚数が増える=耕作放棄地が減ることなので、やりがいを持って管理しています。
美味しさの追求と循環型農業の推進
―― では次に、お米づくりにおけるこだわりについて教えていただけますか?
一番のこだわりは肥料ですね。数年前より化学肥料を減らして有機肥料メインの農業に転換したんです。使用している有機肥料は主に牛糞と鶏糞の2種類で、牛糞はお米の甘みに直結して、鶏糞は根や茎を丈夫にするという特徴があります。
配合は社内秘ですが、都市部の高級店などに卸す「神戸ビーフ」生産者・盛本牧場の牛糞と、卵かけご飯祭り日本一に3年連続で輝いた「夢王」生産者・藤橋商店の鶏糞を、適度なバランスで配合して土に混ぜ込んでいます。
―― ちなみになぜ、有機肥料を使った農業に転換したのですか?
もともと化学肥料を使っていたのですが、化学肥料は即効性が高い反面、使いすぎると土壌には良くないんですよね。また近年は、地球温暖化の影響で作物自体も育ちにくくなっていて、土壌改良の必要性に迫れられていたので、有機肥料をふんだんに使うことに舵を切りました。
―― 有機肥料の活用で苦労したことは?
今もなお改良中ですが、最適な配合を見つけることにかなりの時間を要していますね。あと、生産原価自体も上がりました。
ですが、“美味しい”と言ってもらえることも増えましたし、“自然由来の肥料を使っているので安心して食べられる”という声も聞けるようになったので、結果的には良かったなと思います。
あと、使わなければ産業廃棄物になる牛糞・鶏糞を肥料に利活用したことで、無意識的に循環型農業に取り組むことになりました。今は、SDGs的観点で佐用町に貢献できているなとやりがいも感じています。
佐用の美味しいお米を全国の方に食べてもらいたい
―― 最後に、読者の方へ想いをお願いします
佐用町は「朝霧」でも有名な街です。朝霧は昼夜の寒暖差が大きいと出やすいのですが、寒暖差が大きい地域では、お米が引き締まり、甘みの素・デンプン含有量が増え、美味しいお米が育ちやすくなります。
他にはない気候風土と、弊社独自のこだわりの有機農法で育った、“安心して食べられる美味しいお米” をぜひ一度ご賞味食べていただければ嬉しいです。
以上、Farm plus Sky & Earth 矢内晴之さんのインタビュー記事でした。
同社で生産する佐用のお米は、「BIG∞パパ」「時代屋」「ふじ」「KUMOTSUKI」といった町内の店舗で食べられるほか、神戸市に店舗を構える「焼肉たくちゃん 本店」「焼肉たくちゃん アッパーイースト」「立ち呑み るぅちゃん」などでも食べることができます。
同店で食事をされる場合は、ぜひお米の味わいも楽しんでみてはいかがでしょうか。
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