YouTuberとして人気を博し、全国の野球ファンに知られる「ゴリスポ先生」こと春名愛仁さん。
そんな彼が2024年、地元・兵庫県佐用町に「GorillaSports」本店をオープンした。人口わずか1.4万人の町で、年商1億円──。
その挑戦の裏にあった決断と覚悟、そして“地域とともに成長するブランド”への想いを聞いた。

ゴリスポ先生(= 春名愛仁 氏)のプロフィール

ゴリスポ先生(=春名愛仁 氏)
1998年7月19日生まれ。兵庫県佐用町出身。
2015年11月より野球系YouTuberとして活動。2020年にオリジナルブランド「GSグローブ」を立ち上げ、2024年に兵庫県佐用町へUターン。同町にて「GorillaSports本店」を開業。現在は本店の運営に加え、「GSグローブ」の取扱店が全国28店舗にまで拡大している。
「あの頃から、ここまで」──YouTuberから経営者へ

重田:
前回の取材で、「スポーツブランドを作りたい」「いずれは店舗を出したい」と話されていました。
あれから1年半で、その夢を形にされましたね。まず率直に、今の気持ちはいかがですか?
ゴリスポ先生:
思ったよりも早かったですね。でも直感を大事に生きてきたので、「今だ」と思った瞬間に店舗を構えました。
地元・佐用町で店を開く理由

重田:
店舗出店、それも地元・佐用町へのUターンという形を選ばれました。なぜ佐用町だったのでしょう?
ゴリスポ先生:
自分に足りないことを補ってくれる人がいるし、相談できる人も多い。事業を支えてくれる人たちもいる。そういう「人のつながり」がここにはあるんです。
それに、地元の課題を解決できるのは自分しかいないな、と思ったのも理由のひとつですね。もちろん、事業をもっと成長させるだけなら都会で出した方が良かったと思いますけど。
反応は賛否両論。でも、それも追い風に
重田:
出店時、家族や同業者、ファンなど、周囲の反応はいかがでしたか?
ゴリスポ先生:
家族は喜んでくれました。でも、同業者からは「商圏がかぶる」って言われたり、メーカーからも批判的な声があったりしました。お客さんからも「アクセスが悪い」と言われることもありましたね。
ただ逆に、この場所に構えたことで新しいファンが増えたのも事実です。結果的には良かったなと思っています。
グローブだけに特化した店を作りたい。

重田:
店舗を構えるにあたって、どんな理想像を持っていましたか?
ゴリスポ先生:
近くに野球ショップはあったんですが、グローブに特化した いわゆる“専門店”はなかったんです。
だからこそ、「知名度が低くても本当に良い製品を扱う店にしたい」と思っていました。自社だけでなく、良いメーカーをもっと有名にするお手伝いができるお店にしたかったんです。
実際、全国に200近く取扱店のある「Amazing(アメイジング)」というメーカーでは、うちが売上日本一の店舗になりました。そのほかにも、「ASTRAL K(アストラル ケー」や「D-Quest(ディークエスト)」など、厳選したメーカーの製品だけを取り揃えています。

佐用町での手応えと課題

重田:
オープンから少し経ちましたが、佐用町でお店を運営してみて感じることはありますか?
ゴリスポ先生:
最初は自信に根拠がなかったけど、やり方次第で戦えるなって感じました。まだまだ成長の余地があるとも思っています。
重田:
今の売上規模はどのくらいですか?
ゴリスポ先生:
今年は年商1億1千万円ほどになる予定です。
GSグローブ誕生と成長

重田:
改めて、「GSグローブ」を立ち上げた当初の思いを教えてください。
ゴリスポ先生:
最初は“自己満足”でした(笑)。
自分が使いたいもの、「こういうグローブがあったらいいな」と思うものを形にしただけなんです。
当時は大学生で、プレイヤーとしての経験をもとに作り始めました。最初は草野球の人向けのつもりでしたね。
でも、徐々にお客さんが増えて、「走れ!大井チャンネル」の視聴者も成長していって。
小学生が中学生に、中学生が高校生に──と年齢層が上がるにつれ、ボーイズやシニアでも使えるよう改良していきました。今では8割が学生ユーザーです。
職人との信頼関係が品質を支える


重田:
長野の職人さんとの関係も深いと聞きました。
ゴリスポ先生:
そうですね。10代の頃からGSグローブを作ってもらっていて、もう6年くらいの付き合いです。
最初は奈良にいた方なんですが、今は長野で独立されていて、今でも作ってくれています。
品質も安定していて、GSが売れるようになった大きな理由のひとつですね。
並行して、日本でもトップクラスの生産工場にもお願いしています。
「サムライ型」や「スーパーヘラクレス」などのハイグレードモデルは、その工場で作ってもらっています。
田舎から年商1億円──成功の裏側

重田:
成長の要因として大きかったのは何でしょう?
ゴリスポ先生:
もちろん、グローブの品質は大事です。でも、それだけじゃなくて、SNSでの見せ方や、ここでしか味わえない体験も大きかったですね。
「ここまで来ないと買えない」っていう特別感は、地方だからこそ作れたと思います。
重田:
SNS発信で意識していることはありますか?
ゴリスポ先生:
“誰が売るか”を見せることですね。「この店じゃないと」「ゴリスポ先生からじゃないと」という理由を作ることを意識しています。
たとえば、型付けのビフォーアフターを紹介する動画も、「売れたグローブ」ではなく「自分が型付けしたグローブ」として発信しています。
経営者として大切にしていること


重田:
経営者として、今一番大切にしていることは何ですか?
ゴリスポ先生:
接客や商品への想いはもちろんですが、「自分が正しい」と思い込まないことですね。常に学び続けること。学生の言葉から学ぶこともありますし、プロ野球選手の意見も“絶対”ではない。
決めつけずに、素直に聞き入れるようにしています。
チームと地域で育てるブランド

重田:
現在はどんな体制で運営されていますか?
ゴリスポ先生:
基本的に1人です(笑)。
重田:
採用するなら、どんな人と働きたいですか?
ゴリスポ先生:
想いに共感してくれる人。
「GSで働きたい」「一緒にブランドを大きくしたい」と思ってくれる人がいいですね。
“独立したい人”より、“一緒に進化していける人”が理想です。
佐用町とともに歩む

重田:
地域との関わりもあるんですか?
ゴリスポ先生:
少しずつ増えてきました。佐用町ではないですが近隣自治体主催のイベントでSNS発信の講師をしたり、母校・佐用中学校の野球部にヘルメットを寄贈するために動いたりしています。来年1月には、佐用町民向けにお話しする機会もいただきました。

重田:
「GorillaSportsがあることで、町が少し明るくなった」と言われることもあるそうですね。
ゴリスポ先生:
ありがたいことに、そう言ってもらえることもあります。GorillaSports本店目当てで佐用町に来てくれる方が増えて、「どんなグルメがある?」「どこ泊まればいい?」って聞かれるんですよ。
ホルモンうどんなら「力作」、観光なら「道の駅宿場町ひらふく」を紹介したり、反対に、「glaminka」や「コバコWork&キャンプ」などに宿泊してGorillaSports本店に来てくれたり。
夏場だと、南光ひまわり祭り鑑賞とセットで来てくれる人もいます。
次のステージへ──数字の先にあるもの

重田:
年商1億円を達成して、次に目指すものは?
ゴリスポ先生:
利益を追い求めるというより、「納得できる商品づくり」をしたいですね。
地域に根ざした取り組みを続け、その結果として数字がついてくるのが理想です。
重田:
今後の展開は?
ゴリスポ先生:
2号店は考えていませんが、取扱店を増やしたり、本店を拡張したりは検討しています。
今は野球だけですが、成長に合わせて新しい展開もありえると思います。
佐用町の未来を見据えて

重田:
最後に、今の佐用町をどう見ていますか?そしてどんな町にしていきたいですか?
ゴリスポ先生:
正直、今の佐用町には若い人にとっての魅力があまりないと思っています。年配の方にとっての良さと、若者が感じる魅力は違うので。
でも、野球をきっかけに“みんなが住みたい町”に変えていきたい。そんな想いで活動しています。
まとめ
兵庫県西端の中でも、電波が届きにくい地域で──
27歳の青年が、たった1年で年商1億円を達成した。
GorillaSports本店、そしてGSグローブの歩みは、“地方でも夢が叶えられる”ことを証明するひとつの確かな実例です。
都会ではなく、地元・佐用町に店を構えた理由。それは「ここで挑戦することで、町が少しでも元気になれば」という想いがあってのこと。
筆者である私・重田自身も、この町で暮らす一人として、GorillaSports本店が誕生してからの変化を肌で感じています。町外から訪れるファンが増え、飲食店や宿泊施設にも活気が生まれた。まさに“シャワー効果”のように、その熱が周囲へと広がっているのです。
好きなことを、本気で続ける。
その姿が、町を変えていく。
GorillaSportsの挑戦は、佐用町に新しい風を吹き込み、「地方からでも夢を形にできる」という希望を、私たちに見せてくれています。

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